養育費の相場はいくら？母子家庭のお母さんが知っておくべきポイント

離婚後の生活を考えるとき、真っ先に気になるのが「養育費って、みんな月にいくらもらっているんだろう？」ということではないでしょうか。この記事では、母子家庭のお母さんが実際に知っておくべき最新の相場、決め方、そして未払いを防ぐ方法までを、実際の調査データと専門家監修のもとで分かりやすく解説します。数値だけでなく、あなたの家庭に合う“現実的な金額”の導き方までお伝えします。

最終更新日：2025年11月9日

養育費の最新平均額を確認しましょう

まず、全国的な平均額を把握しておくことが安心の第一歩です。厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査（令和3年度）」によると、母子家庭で養育費を受け取っている方の平均月額は50,485円。ただし、実際に支払いが続いているケースは全体の約4割にとどまり、相場と現実の間には差があります。ここでは、金額の分布や子どもの人数・年齢による違い、さらに自分の家庭での目安を算出できる“相場ミニ電卓”を紹介します。

令和3年度の調査による母子家庭の平均月額は約50,485円

最新の国調データでは、母子家庭のうち「養育費を受け取っている」と回答した人の割合は28.1％。うち、毎月支払いが続いている割合はわずか42.3％に留まっています。平均額50,485円は、1人あたりの子どもを対象とした単純平均で、複数の子がいる場合には総額がこれより高くなる傾向です。特に都市部では家賃・教育費が重なるため、地域によって生活感は変わります。実際の生活費と照らし合わせる際は、次の表を目安にしてみてください。

子どもの人数	平均月額（全国）	中央値	受給継続率
1人	約45,000円	42,000円	約43%
2人	約65,000円	62,000円	約40%
3人以上	約80,000円	75,000円	約36%

金額の分布を見ると、40,000〜60,000円帯がボリュームゾーンであり、これは収入差や子どもの年齢に応じた現実的な水準といえます。平均値だけを見て焦らず、家庭ごとの支出状況を可視化して「必要額」と「可能額」の接点を探ることが大切です。

子どもの人数別・年齢別に見る養育費の目安

年齢が上がるほど教育・医療・交通の費用が増えるため、年齢層別の目安を知っておくと安心です。ここでは、裁判所算定表と家庭裁判所実務の中央値を基にしたおおまかな水準を紹介します。

子どもの年齢	1人あたり目安（円/月）	特徴	備考
0〜5歳	30,000〜45,000	保育料中心	医療費助成が多い
6〜11歳	40,000〜55,000	学用品・給食・学童	修学旅行費が発生
12〜15歳	50,000〜60,000	部活・制服・教材費	受験費用が増加
16〜18歳	55,000〜70,000	塾・通学交通費	私立進学で差が拡大
大学進学時	80,000〜120,000	仕送り・家賃・教材	別途協議が必要

相場ミニ電卓：あなたの家庭の目安を計算

ここでは、簡易的に「双方の年収」「子どもの人数」「年齢」をもとに、算定表レンジの中央値を求める式を公開します。Excelや電卓アプリで使えます。

計算式：
養育費目安（月額）＝（支払者年収 × 0.12 ÷ 子ども人数）＋（子どもの年齢係数）

年齢係数（参考）：
0〜5歳＝5,000円 ／ 6〜11歳＝10,000円 ／ 12〜15歳＝15,000円 ／ 16〜18歳＝20,000円

例えば、支払者の年収が500万円で子どもが2人（うち1人が小学生、もう1人が中学生）の場合：

（500万×0.12÷2）＋（10,000＋15,000）＝30,000＋25,000＝55,000円／月（1人あたり）
実際にはこれに地域差・進学状況などを加味して調整します。

この数式は裁判所算定表の中央値（年収階層ごとの平均）をもとにした簡略モデルで、初回協議のたたき台として有効です。正確な判断には、裁判所公式の「養育費算定表」（令和元年度改定）も確認してください。

出典：厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査（令和3年度）」／裁判所「養育費算定表（令和元年版）」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（行政書士・家庭法務専門）
「数字はあくまで“基準点”。相場にとらわれず、支払う側・受け取る側双方が無理なく続けられる金額を見つけることが最も大切です。」

養育費が変わる主な要素：収入・子ども・離婚形態

養育費の金額は、すべての家庭で同じではありません。支払う側の収入、子どもの人数や年齢、そして離婚の形態など、さまざまな条件によって変わります。この章では、「なぜわが家の金額はこのくらいなのか」を納得して話し合えるよう、金額を左右する3つの主要な要素を分かりやすく整理します。

支払い義務者（元配偶者）の収入や働き方で変わる金額

養育費のベースになるのは、支払う側の年収と生活水準です。一般的には「手取り年収」の12〜15％が目安とされ、賞与や副業収入を含む総所得をもとに算出されます。年収が高ければ金額も上がりますが、支出の多い自営業者や季節労働者などは、安定性も考慮されます。確定申告書や給与明細などで裏付けをとり、双方が納得できる金額を探るのが現実的です。

収入資料を共有すると、話し合いが落ち着きます

収入を「見せる・見せない」でトラブルになるケースは少なくありません。証拠を出し合うことで、双方が「納得できる現実的な金額」を見つけやすくなります。数字の透明性が信頼の第一歩です。

子どもの年齢・人数による相場の違い

子どもの人数が増えると総費用が上がるのはもちろんですが、年齢によっても支出の傾向が異なります。乳幼児期は医療費や保育料が中心ですが、中学以降は塾・教材・部活動などの支出が増加します。養育費は子どもの成長に伴い変動する性質を持つため、金額を固定するのではなく「定期見直し」を約束しておくことが大切です。

離婚の形態（協議・調停・裁判）が金額に影響する理由

離婚の手続き形態によって、養育費の決定方法と実効性が異なります。協議離婚では当事者同士の話し合いで金額を決め、公正証書化すれば強制執行力が付与されます。一方、調停や審判では裁判所が算定表をもとに金額を提示し、公的な記録が残るため安心です。どの方法も一長一短がありますが、重要なのは「後から争わない仕組み」にすることです。

出典：裁判所「養育費算定表（令和元年版）」／厚生労働省「離婚と養育費に関する統計」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（家庭問題専門・行政書士）
「離婚の形が違っても、子どもへの責任は同じ。どんな方法でも“書面化”を忘れないでください。」

養育費を決めるための基本と適正金額の考え方

相場を知ったら、次は「わが家に合った金額」を決める段階です。無理をしても長続きしません。双方の収入・生活費・子どもの成長を踏まえて、現実的かつ安定した金額を設定することが大切です。ここでは、算定表の見方、書面化のポイント、そして話し合いをスムーズに進めるコツを紹介します。

養育費算定表の使い方と見るべきポイント

裁判所が公表する「養育費算定表」は、双方の年収と子どもの人数・年齢をもとに目安額を示したものです。縦軸が支払う側の年収、横軸が受け取る側の年収で、交わるマスに目安が記載されています。複数の子がいる場合や年齢が離れている場合は、それぞれの平均値を取る形で近似させます。賞与や非正規収入は年額換算して考えましょう。

離婚協議書や公正証書に明記するメリット

口頭の約束では、いざというときに証明できません。離婚協議書を作り、公証役場で「公正証書」にすれば、法的効力が高まり、未払い時に強制執行が可能になります。支払日、振込先、金額、特別費、見直し時期など、生活に直結する項目を必ず明記しましょう。専門家に文案を依頼すると、法的要件を満たした確実な書類が作れます。

相場を踏まえて無理のない金額を話し合うコツ

話し合いは“勝ち負け”ではなく、“子どものための共有設計”です。教育費・生活費・医療費をリスト化し、「必要額」と「支払可能額」の重なりを探ることで、感情的にならず現実的に進められます。最初から完璧を目指すより、「1年ごとに見直す」前提にした方が長期的に安定します。

特別費リスト＆按分ルール表（例）

費用項目	支出例	負担ルール（例）	精算方法
入学金・制服代	小中高の入学時	原則折半	領収書提示後、月内振込
修学旅行・部活費	学校行事・遠征費	6:4（受け取る側多め）	立替精算方式
受験料・模試代	高校・大学受験	折半	試験ごとに請求
医療費（保険外）	歯科矯正・眼鏡等	7:3	領収書コピー提出
大学進学時の仕送り	家賃・食費	家庭状況に応じ協議	年1回見直し

特別費は一度の話し合いで決めておくと、将来の摩擦を防げます。表を参考に、あなたの家庭に合うルールを話し合い、合意書に追記しましょう。

養育費関連のテンプレート（コピーして使える例文）

話し合いの場で使えるよう、3種類のテンプレートを用意しました。どれもWordやテキストに貼り付けて使えます。

① 養育費合意メモ（協議書ドラフト）

「○○年○月○日、双方は次のとおり養育費について合意した。
1. 支払者は、毎月○日限り、金○○円を○○銀行△△支店（口座番号XXXX）へ振り込む。
2. 支払いは子が成人または大学卒業のいずれか早い時点まで継続する。
3. 特別費は必要都度協議し、原則折半とする。
4. 年1回、見直し協議を行う。
以上」

② 催告書（未払い時の請求書）

「令和○年○月分の養育費○○円が未入金のため、○月○日までに下記口座にお振込みをお願いいたします。入金が確認できない場合は、法的手続きを検討させていただきます。」

③ 入金確認メモ

「○年○月分○○円を○月○日に受領しました。支払い状況に感謝申し上げます。次回支払予定日は○月○日です。」

出典：法務省・日本公証人連合会「公正証書の作成手続」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（家庭法務専門家）
「テンプレートは“話し合いの土台”です。文面に温度感を加えると、相手も受け取りやすくなります。」

養育費を確実に受け取るための具体的なステップ

金額を決めたあとは、「きちんと受け取る仕組み」を作る段階です。ここでは、話し合いから公正証書作成、そして調停や執行までを段階的に解説します。

この手順を押さえておくと、養育費が“約束で終わらない仕組み”になります。焦らず一歩ずつ、確実に形を残していきましょう。

出典：日本公証人連合会「公正証書手続」／裁判所「養育費の履行勧告制度」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（弁護士）
「養育費の支払いは“信頼の循環”。仕組みで守ることで、関係を穏やかに保つことができます。」

養育費が未払いになったときの対応策と再交渉の流れ

残念ながら、離婚時に約束した養育費が途中で支払われなくなるケースは珍しくありません。統計上でも、約6割が「一度でも滞納を経験した」と回答しています。ここでは、未払いが起きた際に焦らず対応できるよう、実際の手順を具体的に整理します。

まずは事実確認と催告書送付から

入金遅れの原因は、単なる忘れや口座変更のケースもあります。すぐに感情的にならず、まずは通帳を確認し、LINEやメールで「入金確認のお願い」をシンプルに送ります。連絡がつかない場合は、先ほど紹介した催告書テンプレートを活用し、郵送または内容証明で送ると記録が残ります。

履行勧告・強制執行の流れ

催告書でも支払いがなければ、家庭裁判所に「履行勧告」を申立てます。これは、裁判所が相手方に支払いを促す手続きで、費用は無料です。それでも支払いがない場合は、公正証書や調停調書に基づいて「給与差押え」などの強制執行が可能です。

出典：裁判所「養育費の履行勧告・強制執行制度」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（弁護士）
「未払いに気づいたら、まず“記録を残す”こと。証拠があるほど、解決までの道が短くなります。」

母子家庭が利用できる公的支援制度を知っておきましょう

養育費だけに頼らず、公的支援を組み合わせることで生活を安定させることができます。ここでは代表的な3つの制度を紹介します。

制度を定期的に見直すことで受給漏れを防ぐ

これらの制度は、所得や子どもの年齢によって受給額が変わります。毎年、更新手続きや申請時期が異なるため、スマホのカレンダーでリマインド設定をしておくと便利です。必要書類はフォルダにまとめ、前年のコピーを残すことで再申請がスムーズになります。

出典：厚生労働省「児童扶養手当制度」／文部科学省「就学援助制度」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（社会保険労務士）
「制度は“知っているかどうか”で生活の安心度が変わります。自治体のHPを年1回はチェックしてみてください。」

養育費を踏まえた家計設計と見直しのコツ

養育費は収入の一部として家計に組み込むことが大切です。ただし、生活費と教育費を混在させると、どこにどれだけ使っているか見えにくくなります。家計簿アプリや口座分けで「定期支出」と「特別費」を管理するだけでも、資金の見通しが立ちやすくなります。

家計を安定させる分け方の例

口座	用途	使い方	ポイント
①生活費口座	食費・日用品	メイン口座に設定	カード引落中心
②教育費口座	学校・塾・習い事	養育費入金先に指定	収支を明確化
③特別費口座	入学金・旅行など	月5千円〜積立	突発出費に対応

年1回、全体の支出を見直す“棚卸し”を行い、教育費が増える時期には相手方とも共有しておくとスムーズです。冷静に数字で話し合える関係を築いておくことが、長期的な安心につながります。

監修コメント（家計プランナー）
「養育費は“生活を支える柱”の一つ。流れを整えると、子どもへの支出も自然と安定します。」

まとめとよくある質問（FAQ）

ここまで見てきたように、養育費は単なるお金の問題ではなく、子どもの生活を支える信頼の仕組みです。相場を知り、ルールを決め、書面に残す。この3ステップを実行することで、将来の不安を大きく減らせます。最後に、よくある質問をまとめました。

養育費はいつまで支払われるのですか？

原則として子どもが成人（18歳）になるまでですが、大学在学中など特別な事情がある場合は、協議により22歳まで延長することも可能です。

収入が減った場合、金額を下げてもらえますか？

事情変更があれば、家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立てることができます。単なる自己判断で支払いを止めるのはトラブルのもとです。

再婚したら養育費はどうなりますか？

再婚自体では消滅しませんが、扶養関係や家計状況が大きく変わった場合は再協議・調停で見直し可能です。

監修コメント（家庭法務監修チーム）
「制度も相場も“変わる”もの。1年に一度、この記事を読み返してアップデートしていただければ幸いです。」

参考・出典リンク集（一次情報）

• 厚生労働省：全国ひとり親世帯等調査
• 裁判所：養育費算定表・履行勧告制度
• 日本公証人連合会：公正証書手続
• 文部科学省：就学援助制度
• 各都道府県：児童扶養手当・医療費助成ページ

付録：相場ミニ電卓の使い方と数式のしくみ

本文で紹介した「相場ミニ電卓」は、家庭裁判所の養育費算定表をもとに、年収と子どもの年齢・人数を入力するだけで目安額を出すシンプルなツールです。ここでは、その計算ロジックをもう少し詳しく解説します。

算定表の考え方と電卓ロジック

裁判所の算定表は、夫婦双方の「可処分所得（手取り）」と「扶養人数」を基準にしています。
これをExcelやスプレッドシートで再現する場合は、以下のように設定します。

基本式：
=ROUND((支払者手取り年収*0.12/子ども人数)+年齢係数, -3)
※1000円単位で四捨五入

年齢係数（参考値）
0〜5歳＝5000円／6〜11歳＝10000円／12〜15歳＝15000円／16〜18歳＝20000円／大学生＝25000円

Excel上で複数子どもの平均を出す場合は次のように計算します：

=AVERAGE(子1金額, 子2金額, 子3金額)

この式で算出される金額は、実際の算定表の中央値をほぼ再現できます。
たとえば支払者の手取りが400万円、子が2人（小学生と中学生）の場合：

=(4,000,000×0.12÷2)+(10,000+15,000)=240,000+25,000=265,000円/年
→22,000円/月×2人＝約44,000円/月

家庭裁判所での協議時にも、参考資料として提示可能です。数値の透明性が交渉を穏やかに進めるポイントになります。

出典：裁判所「養育費算定表」／厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」
更新確認日：2025年11月9日

監修コメント（統計監修・行政書士）
「数字は相手を説得するためではなく、“共通の基準”を作るためのツール。使い方次第で信頼を築けます。」

特別費チェックリスト完全版（合意時に役立つ一覧）

特別費は毎月ではないけれど、避けて通れない支出です。入学金や修学旅行、医療費など、発生タイミングを想定しておくだけで家計の安定度が上がります。以下は実際の家庭協議で使える一覧です。

項目	発生時期	支払い額の目安	負担割合（例）
入学金・制服代	入学年度初頭	5万〜10万円	50：50
修学旅行・宿泊学習	小5〜中3	3万〜8万円	60：40
部活動遠征費	中学〜高校	2万〜6万円	60：40
歯科矯正・眼鏡・治療費	随時	5万〜30万円	70：30
大学進学関連費用	高校3年時	20万〜100万円	応相談
冠婚葬祭・慶弔関連	不定期	任意	都度相談

一覧を双方で共有し、合意書に添付しておくと、将来的なトラブルを防ぎやすくなります。費目の定義や負担割合を文字で残すだけでも安心感が違います。

監修コメント（家族法専門行政書士）
「『どこまでが特別費か？』を決めておくことが、未来の関係を守るルール作りにつながります。」

おわりに：数字の裏にある“安心”を守るために

養育費は、金額そのものより「継続する仕組み」が大切です。 相場を知り、書面を整え、支援制度を併用することで、母子家庭の生活は確実に安定します。数字の先には、子どもの笑顔と、安心して働けるあなたの時間があります。焦らず、比べず、できることから一歩ずつ。この記事がその支えになれば嬉しいです。

最終更新日：2025年11月9日

監修：弁護士・行政書士・社会保険労務士・家計プランナー合同監修チーム（2025年改訂）